【税理士の節税】所得拡大促進税制を利用した節税対策
制度拡充・延長
個人の所得水準の底上げの観点から、平成25年度税制改正で新設された所得拡大促進税制。
早くも平成26年度税制改正で拡充・延長されたこの制度を上手く利用すれば、法人税額から一定割合の税額控除ができるため、節税対策として有効です。
まず制度の概要としては、青色申告法人が国内雇用者に対して給与等を支給する場合に、一定の要件を満たすときは、その雇用者給与等支給増加額の10%が税額控除ができるというものです。
ただし、適用事業年度の法人税額の10%(中小企業者等については20%)が限度となります。
一定の要件については、
➀ 給与等支給額が基準事業年度の給与等支給額と比較して一定割合(適用年度ごとに異なる)以上増加していること ➁ 給与等支給額が前事業年度の給与等支給額を下回らないこと ➂ 平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額を超えていることが挙げられています。(経済産業省) |
大企業をはじめとして景気回復の兆しがあるものの、中小企業においてはまだまだ実感するまでには至っていないのが実情ではないでしょうか。
大企業のようにベースアップに踏み切れる企業はまだしも、現実としてベースアップに二の足を踏んでいる企業も多いと思われます。
では、そういった企業がこの制度を活用するにはどうしたら良いでしょうか。
ベースアップ出来なかった分を賞与・一時金として引き上げるという方法があります。
この方法を採れば、企業の業績を考慮しながら人件費をコントロールでき、優遇税制活用の道が開けます。
未払の決算賞与でも可能
賞与・一時金については、その支給時期を検討するだけで非常に高い節税効果が発揮されます。
多くの企業では、ボーナスの支給時期を夏と冬に設定しているのが一般的ではないでしょうか。
この支給時期を決算期に設定することで、企業の利益を調整することが出来るのです。
いわゆる決算賞与というものです。
簡単に言ってしまえば、利益額の範囲内で支給するボーナスを決定するということです。
企業の法人税は、利益額をスタートとして所要の調整を加えた結果に対して税金が課されます。
決算賞与は利益額そのものを減額しますので、当然税金は安くなるのです。
そして、この決算賞与の優れているところは、何も決算月に支払わなくても未払のままの処理でも可能というところです。
ただし、決算賞与を未払で処理するには次の要件を満たしておくことが必要になります。
➀ その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して通知をしていること。 ➁ ➀の通知をした金額を通知したすべての使用人に対しその通知した日の属する事業年度終了の日の翌日か ら1か月以内に支払っていること。 ➂ その支給額につき➀の通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。 |
要するに、従業員に「決算賞与を支給します。金額は○○円で1か月以内に支払います。」と通知して、その通りに支給するということです。
例えば、決算日後に退職した従業員に決算賞与を支給するとして未払計上していたにもかかわらず支給しないなど、要件の不備については、未払賞与の損金算入が認められなくなりますので特に留意する必要があります。
このようにベースアップに限らなくても、まず、
➀ 事業計画などで従業員に決算賞与を支給する旨を周知しモチベーションアップを図り、 ➁ 全社一丸となって利益が出たらその範囲内で決算賞与を支給する。 ➂ 決算賞与は要件をクリアすれば未払でもよい。 |
これらをうまく組み合わせることで従業員のやる気を引き出しながら高い節税効果が期待できるため、ぜひおすすめしたい節税対策なのです。