【税理士の節税】消費税の届出書による節税
消費税の課税期間は必ずしも事業年度による必要はない
消費税は、課税売上に対する消費税から課税仕入に対する消費税を差し引いて計算しますので、課税売上高に対する消費税が課税仕入に対する消費税より多ければ消費税を納付、その逆でマイナスになる場合は還付となります。
輸出業者などは、免税売上が多いので課税売上に対する消費税が課税仕入に対する消費税より多くなる傾向があり、この場合、申告することによって消費税の還付を受けることができます。
この申告の基礎となる消費税の課税期間は、法人の場合は、原則として事業年度となります。
ただし、輸出業者のように毎期申告により消費税の還付を受けるような事業者の場合は、できる限り早期に消費税の還付を受けることが資金繰りの都合上望ましいため、消費税の課税期間を短縮することができる特例があります。
還付を受ける輸出業者の多くは、この特例を利用しています。
課税期間を短縮する方法
課税期間の短縮については、事業年度の初日から3か月又は1か月ごとを課税期間とすることができます。
課税期間を短縮するためには、「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を原則としてその適用を受けようとする短縮に係る各期間の開始の日の前日までに税務署に提出する必要があります。
例えば、3月決算法人が7月から「3月ごとの課税期間特例」を受けるためには、6月30日までにこの届出書を提出する必要がありますが、提出した場合にはもともと1年だった課税期間は次の課税期間に区分されます。
➀ 4月1日から6月30日 ➁ 7月1日から9月30日 ➂ 10月1日から12月31日 ➃ 翌1月1日から3月31日 |
もちろんこの課税期間の短縮の特例を選択しても、もともとの事業年度を課税期間とする原則にも戻ることはできますし、また3か月ごとの課税期間から1月ごとの課税期間へ若しくは1月ごとの課税期間から3か月ごとの課税期間への変更もできます。
ただし、課税期間の特例の適用を受けた日から2年間は変更できませんので、慎重に判断する必要があります。
届出書の合わせ技によって節税する
節税に活用する方法としては、今期中に大規模な修繕や建物の新築・買い換えなどの多額な設備投資計画を急に決定した場合などが考えられます。
例えば、簡易課税を選択している事業者の場合には、消費税の計算の仕組み上、本則課税と違って課税仕入に対する消費税は一切考慮されないため、支払った消費税額が多額であっても還付を受けることができなくなります。
そこで、この課税期間の短縮特例を活用して還付を受ける方法を考えるのです。
簡易課税制度を選択してから2年間この制度を適用していれば、簡易課税制度をやめることができます。
この場合には「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を、適用をやめようとする課税期間の初日の前日までに提出する必要があります。
今期中に多額の設備投資があるからといって、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出しても効力が発生するのは翌期からなので、今期は簡易課税のままとなり間に合いません。つまり還付を受けられないことになります。
しかし、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」の提出と同時に、「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出することによって、当期中であっても簡易課税をやめて本則計算ができることになります。
タイミングさえしっかり検討すれば還付を受けることができますので節税になります。
この届出書の合わせ技は、他のケースでも考えられますが、還付金だけで判断するのではなくデメリットなども総合的に判断した上で提出する必要があります。