金融検査マニュアルから読み解く金融機関対策 企業の実態的な財務内容編
金融検査マニュアルとは
金融機関は、貸付けを行うにあたり企業の格付けを行います。また貸付先に対しても、毎年格付けを行い続けることになります。
格付けは、ランクの高い方から順に、次のようになっています。
- 正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
金融機関はこの格付けをもとに貸付けを行いますので、少しでも上位に格付けされたいところです。
ではそのためにどうすればいいのでしょうか?
その一つの対策として、知っておきたいのが、金融庁が公表している「金融検査マニュアル」です。特に、中小企業への融資については、「金融検査マニュアル 別冊中小企業融資編」が公表されています。
金融機関は企業の格付けを行うにあたり、この金融検査マニュアルを指針とすることとされています。
したがって、この金融検査マニュアルを読み解くことにより、金融機関がどのように判断しているのかがわかり、対策を打つことができるのです。
企業の実態的な財務内容について
まず、企業の実態的な財務内容についてどう判断するのかを確認していきましょう。
次のような企業があったとします。
・代表者から運転資金の借入れを行っている。その借入れを資本金とみなした場合には、債務超過は解消される。
・代表者は不動産を有しており、返済余力は十分にあると考えられる。
・収益性は、今後改善される見通しである。
これに対し、「金融検査マニュアル 別冊中小企業融資編」では、次のような記載となっています。
しかしながら、代表者からの借入れにより資金調達が行われており、それを原資に金融機関への返済が行われている場合には、債務者の実態的な財務内容及び返済財源を確認する必要がある。
これは、債務者である会社だけでなく、その代表者も含めて判定することを意味します。
実際、この事例では、代表者からの借入金については、代表者がその返済を求めないことが明らかであるのであれば、自己資本として考えてもよいと記されています。
そして、代表者個人の返済能力も含めて総合的に勘案した結果、実質的に資産超過であり、返済能力があると認められるのであれば、正常先として判断できるとも記されているのです。
このように、会社が債務超過の状況にあろうとも、代表者個人の返済能力が認められれば、格付けを正常先とできる場合があります。ただし、金融機関が進んで調べてくれるわけではありませんので、会社から金融機関に説明する必要があるでしょう。