【税理士の節税】経営セーフティ共済-万が一に備えながらの節税
節税対策は大きくわけて2つある
節税対策には、いわゆる「繰延型」と「永久型」と言われるものがあります。
「繰延型」は、当期の利益を翌期以降に繰り延べることによって今支払う税金を少なくして翌期以降に先送りする節税方法です。
一方、「永久型」とは、一度受けた節税効果は永久的なもので後に税金を負担するようなことがない節税方法です。
もちろん節税対策としては、「永久型」の節税対策の方が優れています。
しかし、「繰延型」の節税対策についてもすべてが否定されるべきではありません。
決算期末になって思わぬ利益が出てしまった場合には、この「繰延型」の節税対策を活用して、翌期以降に先送りした税金に対して「永久型」の節税対策を練ればいいのです。
経営者にとっては、毎年の利益をコントロールすることはとても重要なことです。
オススメの「繰延型」節税対策
そこで、「繰延型」の節税対策としてお勧めなのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)への加入です。
この共済に新規加入すると最高240万円(掛金月額20万円×12ヶ月)まで経費に算入できます。
また、既に加入している場合には、翌年度分の掛金を前納できますから、最高480万円(掛金月額20万円×12ヶ月<当期毎月払い>+掛金月額20万円×12ヶ月<翌期前納分>まで経費に算入できます。
想定外の利益が出てしまった場合など決算期末になっての節税対策としては、恰好の節税アイテムになるのではないでしょうか。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)とは
経営セーフティ共済は、取引先の倒産の影響を受けて、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防止するための共済です。
1年以上事業を行っている中小企業者で資本金や従業員数が一定以下のものであれば加入できます。
一定以下のものといっても意外と規模が大きくても加入できると感じるのではないでしょうか。
もちろんフリーランスや個人事業主の方も加入できます。
経営セーフティ共済に関するポイントは次の通りです。
➀ 掛金は、月額5千円から20万円までの範囲で自由に選択できます。 ・増額・減額もできますが、減額は事業経営の著しい悪化など一定の場合だけにな ります。 ➁ 掛金は将来の分を一括で前納できます。 ・掛金を前納した場合、一定割合の前納減額金が支払われます。 ➂ 掛金は、総額800万円まで積み立てられます。 ・この掛金は掛け捨てではなく、40ヶ月以上加入していれば、掛金の全額が戻って きます。 ➃ 掛金は、法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費に算入できます。 ➄ いざというときは貸付制度を利用できます。 ・取引先事業者が倒産していなくても、臨時に事業資金を必要とする場合に、解約 手当金の95%を上限として借入ができます。無担保・無保証人で、かつ低利率で す。 ・取引先の倒産時には、掛金の払込総額の10倍(最高8,000万円)、かつ回収が困 難な売掛債権等の額の範囲内で緊急借入が可能です。貸付条件は、無担保、無保 証、無利子ですが、貸付金額の 10 分の 1 に相当する額が掛金総額から控除され ます。 |
「繰延型」節税対策の出口
「繰延型」の節税対策としては、生命保険を使った節税対策と似ていますが、生命保険の場合は解約返戻金の額が最大となるときに解約しなければ損しますので、そのタイミングで解約益を圧縮するための節税対策が必要になります。
一方、経営セーフティ共済は、40ヶ月以上加入していれば掛金の全額が戻ってきますから、いつ解約しても良いのです。
いつ解約しても良いわけですから、解約益を圧縮するための節税対策のタイミングを自ら選択することができます。
業績が悪化して赤字になりそうなときは解約してその赤字と相殺することもできます。
解約のタイミングを選択できるのは、この制度の大きなメリットです。
ただし、生命保険の場合は上限がありませんが、経営セーフティ共済の場合は上限が800万円と決まっています。
ですから、本来の目的である連鎖倒産防止と節税対策を考えるなら、経営セーフティ共済を優先し、将来に向けて不足する部分があるならば生命保険などで補完するといった対策が必要です。