【税理士の節税】親族を雇うなら「みなし役員」に気を付けよう
身内を使った所得分散の節税
同族会社といわれる会社の場合、節税対策のために配偶者や親族を雇うことも少なくありません。
これは親族へ給与を支給することによって個人が負担する所得税と会社が負担する法人税のバランスをトータルで検討することができるからです。
所得税は超過累進税率ですから所得が高ければ高いほど税率が高くなるため、親族内で所得分散を図ることによって所得税の節税ができるのです。
また同時に、親族へ給与を支払うことによって会社の経費に計上できますから、会社の利益が減少する結果、法人税の節税もできるのです。
もちろん、単純に所得を分散するというわけにはいきませんので、配偶者や親族の職務内容等からみて常識的な範囲内で給与を決定しなければなりません。
みなし役員って何?
配偶者や親族を雇うといってもその形態は様々です。
配偶者や親族を役員として登記している場合がありますが、この場合、配偶者や親族は会社法上の役員ですから支給する給与は役員報酬となります。
もちろん税制上も役員報酬としての取扱いになりますので、毎月同額の定期同額給与として支給しなければその一部は損金(≒経費)となりませんし、賞与を支給した場合には役員賞与として税務署に事前確定届出の手続きをしなければ損金となりません。
つまり支払ったとしても税金計算上は考慮してもらえないということです。
では、配偶者や親族を役員として登記していなかった場合については、従業員と同様に給与・賞与を自由に支給したとしても損金扱いになるのでしょうか。
ここは注意が必要です。
法人税法では、会社法とは別に役員の範囲について規定があります。株主総会等で選任された役員だけでなく、その範囲はもっと広く定められています。
この場合のこの使用人を「みなし役員」といいます。
役員として登記されていない場合でも税制上は役員とみなして、役員報酬や役員賞与などの特別な取扱いが適用されるのです。
同族会社の「みなし役員」とは
次の➀から➃のすべてを満たす法人の使用人は、同族会社の「みなし役員」となります。
➀ 法人の経営に従事していること。
➁ 50%超基準 ➃ 5%超基準 |
ですから、株式をすべて持っている社長の奥様は、株式の所有割合だけでみると「みなし役員」になります。
あとは➀の経営に従事しているかどうかの判定になりますが、これには明確な定めはありません。
ただ、仕入や販売に関する計画や契約、資金調達や返済計画の策定、雇用に関する決定などについて権限がある場合には実質的に経営に従事しているものとして取扱われますから、税務調査ではこれらについて該当しないことをいかに説明するかが重要になります。
親族が従業員としての立場で勤務していれば他の従業員と同様に給与はもちろん賞与も損金となるので節税となります。
一方、みなし役員とみなされれば、税務上は役員としての取扱いですから、仮にボーナスを支給したとしても損金としては認めらないということになりますので、➀~➃の判定は節税対策としてとても重要なことになります。